「HSPの人は繊細すぎるから、歯科衛生士のような仕事は難しいのでは?」そう思われるかもしれません。しかし、HSPの特性は、歯科衛生士という仕事においても大きな強みとなり得ます。
そこで本記事では、HSPの特徴や歯科衛生士に向いている理由、繊細さを活かした働き方について解説します。
この記事を書いた人 Yukino 歯科助手から歯科衛生士へのキャリアアップや転職、歯科医院での働き方など、自身の経験をもとに役立つ情報を発信。さらに患者向けにインプラント・マウスピース矯正・審美治療など幅広いテーマを扱う。わかりやすく、読者の心に響く文章を心がけ、歯科に関する様々な記事をこれまで100本以上執筆した経験を持つ。 |
HSPとは何か?
HSPとは、「Highly Sensitive Person」の略称で、生まれつき感受性が強く、周りの人よりもさまざまな刺激に対して敏感に反応しやすい気質を持つ人のことを指します。近年では「繊細さん」とも呼ばれ、その特性への理解が広まりつつあるため、ご存じの方もいるでしょう。
HSPの特徴として、たとえば、人混みや大きな音に疲れやすい、他人の感情や雰囲気の変化に敏感に気づく、強い香りや明るい光に過敏に反応する、といった点が挙げられます。
こうした特徴は、脳の感覚処理システムが通常よりも活発に働いているためです。また、生まれつきの気質に加えて、育った環境も影響していると考えられています。
人口の約15~20%がHSPの特性を持つとされており、決して珍しいものではありません。HSPは病気ではなく、あくまで生まれ持った気質の一つであり、繊細さを活かして活躍できる場面も多くあります。
【HSPセルフチェック】当てはまったら繊細さんの可能性大!
以下のチェックリストに多く当てはまる場合、HSPの可能性が高いです。
歯科衛生士は向いていない?HSPが抱えやすい4つの悩み
HSPの歯科衛生士は、その繊細さゆえに特有の悩みを抱えてしまうことがあります。
①患者との距離感に悩む
患者の痛みや不安をまるで自分のことのように感じてしまい、精神的に疲弊してしまうことがあります。
共感する力は歯科衛生士にとって必要な能力ですが、適切な距離感を保つ術を身につけることが長く活躍していくために必要となるでしょう。
②人間関係に疲れてしまう
HSPの人は、職場の雰囲気や人間関係にとても敏感です。特に、女性が多い歯科医院では、ちょっとした言葉や態度にも傷つきやすく、ストレスを感じやすい傾向があります。また、同僚や上司とのコミュニケーションに気を使いすぎて、精神的に疲れてしまうことも少なくありません。
さらに、職場の雰囲気が悪かったり、誰かが不機嫌そうにしていると、「もしかして自分が何かしたのかも…」と不安になり、仕事に集中できなくなってしまうことも。
長く働き続けるためには、良好な人間関係を築ける職場環境を見つけることが大切です。また、自分の感情を守るための境界線を意識し、無理な頼み事を断ったり、一人でゆっくり過ごす時間を作ったりしてみましょう。
③完璧主義で自分を追い込んでしまう
HSPの人は、責任感が強く、完璧主義な一面を持つことがよくあります。そのため、常に100%以上の成果を求め、知らず知らずの内に心身に負担をかけ、燃え尽きてしまうリスクが高いです。
特に、患者の治療結果に対して必要以上に責任を感じ、些細なミスでも必要以上に自分を責めてしまい、なかなか気持ちを切り替えられないことも。完璧を目指すのではなく、「できたこと」に目を向けて自分を認め、労わることを意識することが大切です。
④刺激が多い職場環境に疲弊する
歯科医院は、医療器具の音や振動、薬品などの臭いなど、HSPの人にとって刺激の多い環境です。また、忙しい診療スケジュールや多重タスクに対処しなければならない状況も大きなストレスに。こまめな休憩や気分転換、場合によっては職場環境の改善など、自分にとって働きやすい環境を作る工夫をすることが大切です。
HSPは歯科衛生士に向いている3つの理由
繊細で感受性が豊かなHSPは、一見、歯科衛生士には不向きに思えるかもしれません。しかし、HSPは、歯科衛生士として強みを発揮できる気質です。ここでは、その理由を3つ紹介します。
患者の気持ちを汲み取れる「共感力の高さ」
HSPは共感能力が高く、相手の気持ちを敏感に感じ取れます。たとえば、初診時の患者さんは、緊張や不安を抱えている場合が少なくありません。HSPの人は、持ち前の繊細さで患者の気持ちを察し、優しい言葉をかけることでリラックスしてもらえることがあります。
また、患者の表情や態度から痛みや不快感を敏感に感じ取れるため、状況に応じた適切な対応ができることも多いです。
共感力は、言葉以外の態度や表情からも伝わります。また、共感するだけでなく、それを相手に伝えることで、患者は「この人は自分のことをわかってくれている」と感じ、信頼関係を築けます。
きめ細やかな対応ができる「丁寧さ」
HSPは細やかな気配りが得意で、丁寧な作業は苦にならない傾向にあります。
たとえば、ブラッシング方法やフロスの使い方を細かく説明し、患者が理解するまで丁寧に指導できるでしょう。
また、歯石除去や歯面清掃といった処置も細部まで気を配り、患者の快適さを追求できます。さらに、口腔内の微細な変化や異常を見逃さず、早期発見・早期治療につなげられる強みもあります。
そういった丁寧さで治療の質を高め、患者満足度の向上に貢献できるHSPの人は、歯科医療の現場で求められる存在と言えるでしょう。
周囲をよく見てサポートできる「観察力の高さ」
HSPの人は、患者さんの表情や声色、動作といった些細な変化から、体調や気持ちを汲み取ることが得意です。また、歯科医師や他のスタッフの動きにも気を配り、必要なサポートを先回りして行えます。
たとえば、治療中に患者が不安そうな表情を見せた場合、すぐに気づいて声をかけたり、診療の準備や片付けなど、周りの状況を見て動くことができるでしょう。
こういった観察力の高さは、チームワークの向上とクリニック全体の効率的な運営に貢献できる存在と言えるでしょう。
【HSPの歯科衛生士必見!】繊細さを活かす4つの働き方
HSPは周囲の環境や人間関係に影響を受けやすい傾向にあります。そのため、職場環境が自分に合っていないと、必要以上にストレスを感じてしまい、仕事のパフォーマンスにも影響が出てしまうことも。しかし、HSPの特性を理解し、活かす方法を見つけることで繊細さを強みに変え、歯科衛生士として活躍できるはずです。ここでは、繊細さを活かす4つの働き方を紹介します。
①職場環境を見直す
HSPの歯科衛生士にとって働きやすい職場環境とは、刺激が少なく、落ち着いた雰囲気があり、周りの人に気を遣いすぎずに済む環境であることです。
院長や先輩歯科衛生士とは、適切な距離感を保ちつつ、必要なときにサポートを受けられる関係性を築ける職場であると、より安心です。
「患者さんと深く関わりたい」という思いが強いHSPにとっては、担当制でじっくりと患者と向き合える職場が向いているでしょう。
また、小児歯科・矯正歯科・インプラント・高齢者歯科など、専門性の高い分野で働くことは、HSPの人が持ち合わせている繊細さや丁寧さを活かせるチャンスとなります。
給与や待遇だけでなく、職場環境にもしっかりと目を向け、自分に合った職場を選ぶことが大切です。
②働き方を変える
自分に合った働き方を選択することでストレスを軽減し、能力を最大限に発揮できます。従来の歯科医院における働き方にとらわれず、柔軟な視点で自分に合ったスタイルを見つけていきましょう。
近年では、夕方までの診療や完全週休3日制を導入するなど、従業員が働きやすい環境作りに取り組む歯科医院も増えています。オンとオフのメリハリをつけやすい働き方は、プライベートの時間も充実させながら、心身ともにゆとりを持って仕事に取り組めるというメリットがあります。
また、「正社員として働く」だけが全てではありません。自分のペースで働きたいという方は、パート勤務も選択肢の一つです。勤務時間や日数を調整しやすいので、プライベートの予定に合わせて無理なく働けます。
③専門性を高めてキャリアアップ
「今の職場で、このまま働き続けていていいのかな」そう感じているHSPの歯科衛生士は、専門性を高めてキャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか?
歯科医療は日々進歩しており、生涯学び続ける姿勢が求められます。積極的に研修や資格取得に取り組むことで、自身のスキルアップにつながり仕事の幅を広げられます。
学会や研究会への参加、論文執筆などの学術活動を通して、最新の知識や技術を学ぶことも良いでしょう。デジタル歯科やAI技術など、新しい分野に挑戦してみるのもおすすめです。
自分の興味のある分野を深く学ぶことで専門性を高め、HSPの繊細な感性を活かしながら自分にしかできない仕事を見つけられるでしょう。
④キャリアチェンジも視野に入れる
「歯科衛生士の仕事が好きだけど、今の働き方がつらすぎる」と感じている方もいるでしょう。歯科衛生士だからといって歯科医院で働く以外に道がないわけではありません。HSPの特性を活かせる仕事は、世の中にたくさんあります。
たとえば、人の話をじっくりと聞くことが得意な方は、カウンセラーという仕事は、その傾聴力を活かせる職業の一つです。また、文章を書くことが好き、あるいは得意な方であれば、歯科衛生士としての知識を活かして、医療系の記事作成や編集などの執筆活動に挑戦してみるのも良いでしょう。
ただ、「HSPだから〇〇に向いている」と決めつけるのではなく、自分自身の「好き」や「得意」をしっかりと見極めることです。
何よりも大事なのは自分を大切にすること
HSPの歯科衛生士は、持ち前の共感力の高さや責任感の強さから、ついつい頑張りすぎてしまう傾向があります。しかし、頑張る方向を間違えてしまうと、自分自身を苦しめ、心や身体を壊してしまうことにもなりかねません。
本当に充実した日々を送るためには、まず自分自身を知ることから始めましょう。自分の得意なこと、苦手なことを理解し、どんなときに喜びを感じ、どんなときにストレスを感じるのか、自分自身と向き合ってみましょう。そして、自分の心地よさを最優先に考え、無理なく働ける環境を選び、自分らしく輝ける働き方を見つけ出すことが大切です。
そうすることで、心身の健康を守りながら仕事にもやりがいを感じ、長く活躍できるはずです。
まとめ
HSPは、共感力の高さ、丁寧さ、観察力の高さなど、歯科衛生士として活躍できる強みをたくさん持っています。
しかし、繊細さゆえに、人間関係や職場環境などに悩みを抱えやすいのも事実です。
HSPの歯科衛生士が長く活躍していくためには、あなたの繊細さを「弱み」ではなく「強み」として活かすこと。そして、自分らしく無理なく働ける環境を見つけることです。
もし、あなたが今の職場で「なんだかつらいな」「もっと自分らしく働きたいな」と感じているなら、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。職場環境や働き方を見直すことで、笑顔で働ける場所がきっと見つかるはずです。
この記事を書いた人 Yukino 歯科助手から歯科衛生士へのキャリアアップや転職、歯科医院での働き方など、自身の経験をもとに役立つ情報を発信。さらに患者向けにインプラント・マウスピース矯正・審美治療など幅広いテーマを扱う。わかりやすく、読者の心に響く文章を心がけ、歯科に関する様々な記事をこれまで100本以上執筆した経験を持つ。 |